楢葉町の思い出
ずいぶん前に、仕事で福島県の楢葉町というところに行ったことがあり、そのときにJヴィレッジのすぐそばにある柏屋旅館というところにお世話になった。楢葉町というところはとてもサッカーの盛んなところで、その旅館も少年サッカーチームが毎年合宿に来るということで、彼らがゆっくり宿泊できるようにと少し前に全面改装したところだったそうで、まだ木の香りの残るとてもきれいな旅館だった。旅館のおばちゃんは「これでサッカーチームが泊ってくれなかったら困るわ」と言いながらも誇らしげに笑顔を浮かべていた。とはいえ、僕が泊ったときには他にお客さんもいないようで、露天風呂付きの部屋でのんびりと過ごしたのだった。
旅館なのでもちろんのことながら朝食、夕食も付いてるわけで、白いご飯と焼き魚、名前もよくわからないような煮物や佃煮のような、ほんとうに台所でおばちゃんが作ってくれた手料理が出された。このときほど、和食がおいしいと思ったことはないというくらい、普通の料理なのにおいしかったのを覚えている。
3泊ほどしていて途中の日に都合で昼前に仕事が終わったことがあって、やることもないので旅館に戻り、ついでにダメ元でお昼ご飯を頂けないかとお願いしたところ、「大したものは出せないけれど」と言いながらも、やっぱりすごくおいしい丼や総菜などをたっぷりと用意してくれたり、翌朝旅館を出るときには「これ、途中で食べて」とゆで卵をくれたりしたことも覚えている。
仕事自体は自分のミスで発生したトラブルの対応で、お客さんにも社内の多くの部署にもものすごく迷惑をかけたので、とても気の重いものだったけれど、この旅館のおもてなしのおかげでずいぶんと気が楽になったのだった。
何年か経ったら、また泊まりに行きたいなと、ふとと思った。